本日の主題であり、結論
“Without wishing to be bound by any theory, …”は、「いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、~」と訳すのがお勧めです。
上記は、特許明細書での独特な表現で、よく使われています。
なぜ使われるかというと、特許出願する場合、明細書に発明の効果の裏づけとなる科学的根拠や学術的原理を記載することは法的に全く要求されていないものの、発明者(または出願人)が発明の価値をしてもらうために、その時点で考えられる根拠を述べるためです。
発明を特許化するためには、発明の効果が、どういう原理やメカニズムによって生じるのかが発明者に分かっていなくても、その効果を示すための構成要素が明細書に記載されてさえいれば問題ありません。(そこが学術論文と異なる点です。)
とはいえ、一応の理論的根拠を示すことで、発明に対する審査官の理解・評価につながり、ひいては、その理論に基づいて特許の権利範囲を相応に拡張できる可能性にもつながります。
もう一つの理由として、後日、第三者により明細書中に開示した理論的根拠とは別の理論・原理が見出されることで、「無効理由あり」等と主張されないようにするための将来の予防線を張っておくためです。
以下に、参考となる対訳をいくつか例示しておきます。
While the inventor does not wish to be bound by any particular theory, it is believed that …
発明者はいかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、~と考えられる。
Without wishing to be bound by a theory, it is believed that …
理論に拘束されることを望むものではないが、~と考えられる。
Without wishing to be bound by theory, it appears that …
理論に拘束されるものことを望むものではないが、~のようである。
Although the applicants do not wish to be bound by any particular theory, …
出願人らはいかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、~。
Without intending to be bound by theory, …
理論に拘束されることを意図するものではないが、~。
While not wishing to be bound by theory, …
理論に拘束されることを望むものではないが、~。
以上、どなたかのお役に立てれば幸甚です。