本記事の主題と結論
“dicalcium phosphate”は、何と訳すべきでしょうか?
「第二リン酸カルシウム」と訳出するのがお勧めです。
理由
“dicalcium Phosphate”はそもそも、CaHPO₄ = リン酸一水素カルシウムを意味します。
仮に字面通りに訳すと、リン酸二カルシウムとなりますが、これを化学用語として解釈すると、Ca₂(PO₄)₁.₃₃₃ = Ca₃(PO₄)₂になるかと思います。
しかし、Ca₃(PO₄)₂は、CaHPO₄と異なるので「リン酸二カルシウム」という訳は誤りです。
では、何が良いかというと、私のお勧めは「第二リン酸カルシウム」です。これは、リン酸一水素カルシウムの別称であるため、英語本来の意味と一致します。
とは言え、現状、dicalcium phosphateの訳語として「第二リン酸カルシウム」が辞書に掲載されていないので、外国語でされた国際出願の明細書等翻訳文では、
第二リン酸カルシウム(dicalcium phosphate)
と訳出するのが無難だと考えます。
(参考)
特許庁の明細書の作成方法の「説明2 記録項目及び記録内容の注意点」では、
“微生物、外国名の物質等の日本語ではその用語の有する意味を十分表現することができない技術用語、外国語による学術文献等は、その日本名の次に括弧をしてその原語を記録します。”
https://www.pcinfo.jpo.go.jp/guide/Content/Guide/Patent/Meisai/doc/P_Meisai.htm
と記載されています。
オンライン辞書の便利さと危うさ
どの英単語を訳すときにも辞書を引くことが基本中の基本です。最近では、オンライン辞書も充実しており、紙の辞書を引いて調べる機会は減ってきているのではないでしょうか。
しかし、日進月歩のオンライン辞書も、その日進月歩さ故に、稀にではありますが、専門用語の訳語で「これは流石に意味が違う」というものを見かけます。オンライン辞書の登録の仕組みや流れは存じ上げませんが、オンライン英和辞書においても、技術用語について日本の専門家のチェックをきちんと入れてほしいものです。
まとめ
“Dicalcium phosphate”は「第二リン酸カルシウム」と訳出するのがお勧めです。
リン酸二カルシウムという訳語は英語本来の意味を汲んでおらず、明らかな誤訳です。
以上、どなたかのお役に立てれば幸甚です。